「ユーザー」とは何か?
デザインのプロセスの中の至る所で「ユーザー」という言葉が使われています。しかし、単に「ユーザー」といっても定義の仕方は様々です。そのため、「ユーザー」という言葉が何を表しているのかがわからなくなり、混乱の原因になることもあります。
ユーザー像を共有しようといった方法論も、そもそもユーザーとは何か?ということが整理されていなければあまり意味がありません。
ということで、どうもあまり詳しく語られないユーザーとは何か?ということを改めて考えてみましょう。
プロフィール型のユーザー
名前、職種、趣味、性別、年齢などを定義したタイプのユーザーというものがあります。
シチュエーション型のユーザー
入学時、卒業時、就職時、結婚時、出産時などその状況ごとに定義したタイプです。
タスク型のユーザー
自転車に乗る人、旅行に行く人、ご飯を食べる人といったようにやることを定義したタイプのユーザーというものがあります。
様々なタイプがありますが大きくはこの3つではないでしょうか。
デザインする際に起こっていること
さて、プロフィール型のユーザーから考えてみます。
プロフィールから何かをデザインするときにどう反映するのでしょうか。こんなプロフィールの人にはこんなデザインがいいだろうという感じで進めることができるかもしれません。
実はプロフィール型のユーザーを元にデザインする時に起こっていることをもう少し詳しく考えてみると、こんなプロフィールの人は、こんなことをする、なのでこんなデザインがいいのではないか?ということではないでしょうか。
注目するのは「こんなことをする」です。
こうなると、実際には3番目のタスク型のユーザーと近くなってきますね。
タスク型のユーザーというのは実際には、ユーザーではなくタスクに焦点を当ててデザインを行います。
極端に言うと、例えば「自転車に乗る人」なら誰でもよい。逆に乗らない人は誰であってもユーザーではないという考えです。
プロフィールが異なっても同じタスクを行うなら同じものを使えば良いという感じです。極端に言えばプロフィールは複数考えられ、手がかりにはならないので切り離す、という感じです。
プロフィール型のユーザーを想定する人と、タスク型のユーザーを想定する人の間にギャップがあるとすると、プロフィール型のユーザーを想定する人は、特定のプロフィールと特定のタスクの両方からデザインを行おうとすることです。
プロフィール型のユーザーの課題
さてここで課題ですがプロフィール型のユーザーからタスクをどのように想像するか。これは非常に複雑です。例えばある俳優のプロフィールがわかっただけでその人のタスクがわかるでしょうか?
おそらく非常に多すぎて実際のデザインには繋がらないでしょう。プロフィール型のユーザーの問題点はここにあります。
この問題点を理解した上であえてプロフィール型のユーザーを使っているならば、実際のデザインフェーズで、うまく使えなくて悩むことはおそらくないでしょう。元からそうなることを知っていて使っているからです。
さて、ひとつ飛ばしていましたがシチュエーション型ユーザーです。
実はこれも同じです。
プロフィールだけではデザインにつながらないので、「こんなことをする」という変換を行い発想をしているはずということを書きましたが、その間にはいっているはずのことです。
つまり、デザインへつなげるときに「このプロフィールの人は、この時に、こんなことをするはずだ。」と変換しているということです。
この「この時に」というのがシチュエーションになります。
純粋なシチュエーション型ではデザイン時にプロフィールを気にしません。
プロフィールは何でも良いので、その状況になった人がユーザーであるとみなします。同じプロフィールでも状況が異なればユーザーではないという考えかたです。
不要な混乱を避ける
ユーザー像の共有というのは近年では様々な組織で自分たちの手でやろう!とチャレンジが行なわれているかと思います。
そういった中でそれぞれのイメージするそもそもの「ユーザー」そのもの定義がずれていることからくる混乱というのは非常にもったいないことでもあります。
かなり大雑把ですが、これらのように「ユーザー」といっても人によって定義のしかたが異なることを知っていると、多少なりとも不要な混乱を避けることができるでしょう。