人に教える
どのような業界でも、人に教えるということは避けられません。
先輩が後輩に、または、仲間同士、はたまたお客さんに対してなど様々なシチュエーションがあります。
「教える」のメカニズム
教えるときには、教える人と教わる人の間に必ずギャップがあります。
教える人と教わる人はいわば異なるステージに立っています。
大きく行うことは、次の2つになります。
1.ステージを把握する
2.ステージからステージへスライドする
1.ステージを把握する
ステージを把握するために、ヒアリングを行います。
ヒアリングの過程で相手が何を知っていて、何を知らないのかを把握していきます。
ステージには以下の種類があります。
・知識レベルのステージ
知っている知らないといった単純なレベルの知識です。
・体感レベルのステージ
やったことがある、やるとどうなるか経験しているかどうかです。
・学ぶ目的のステージ
教えてもらい何をしようとしているのか、どのような目的で教わろうとしているのかということです。
知識レベルのステージを知ることで、まず、何を知っていて、何を知らないのかを把握し、何を伝える必要があるのかがわかります。
体感レベルのステージを知ることで、教えるときに何をやってもらう必要があるのかがわかります。
学ぶ目的のステージは、本来そもそもの話なので一番最初にくるべきことですが、これはヒアリングを通してわかることのほうが多いと思います。もちろん形式的な目的を把握するために直接目的をきくことも必要です。しかし、一方で、言語化されていない目的は何なのか?という点については聞くだけでなく考え続ける必要があります。
2.ステージからステージへスライドさせる
ヒアリングによってステージを把握した後に行うことは、次のステージに進むことです。
ステージ間の移動方法は人それぞれですが、最も基本的な方法は、自らが学んだときにどのようにステージを移動したのかを思い出すことです。
知識レベルを次のステージに持っていくためには何が必要だったのかを思い出します。
大抵の場合は、体感レベルのステージをあげることで知識レベルのステージも移行できます。
・例)自分でやってみることで学ぶ
このときに新しい知識が身に付いたときに行ったことをよく思い出し、知識レベルのステージと関連のあることを体感してもらうことがとても大切です。
・例)やみくもにやってもらうのではなく、やった結果得られる知識を前提としてやってもらうことを定める
自分がやったことのうち何が学びにつながって、何がつながらなかったのかを分けない場合は、いわゆる、「苦労をしたことも、今思えばそこから何か学んだんだ」という人間の元々もつポジティブ思考が仇となります。
学ぶためには苦労しなくてはいけないというように、要点を整理せずに全く同じことを体感させようとして失敗します。
これらを通して、うまくいかないときに学ぶ目的のステージを考えることになります。
まず、自分が学んだ方法と、対象の人が学ぶときのスタンスの違いを考えます。中にはあまり教わる気がないという場合や、自分が考えていた目的と違っていたということもあり、その場合はタイミングを見計らう必要(ときには教えないということもあり)があります。
(ここは一番難しく、人が学ぶときのスタンスというのは肌で理解することができないのです。すぐにできてしまって悩まない人は教えられないというのはよくある話です。)
うまくいかない場合のいくつかのチャレンジとして、あきらめることも1つです。
肌で理解していない学び方を前提として教えるというのは高度であり、ステップごとに相手の学び方を想像する必要があります。その想像が間に合わない場合は、ほかの人が教えた方が良い場合も多々あるでしょう。
ちなみに言語化されない目的として、楽しく学びたい、仲のいい人から学びたい、尊敬する人から学びたい、ほめられながら学びたい、偉そうじゃ無い人から学びたい、すごそうな人に学びたいなどがあります。なかなか難しいところですね。
また長期的に考えた場合、その対象の人に教えるだけでなく、その人がまたほかの誰かに教えるとことができるように教えるといったこともでてきます。そのひとが誰かに教えることを目的として学ぼうとしているのであれば、その目的にも沿った形で伝えることも必要になります。
まとめ
最後になぜ自分自身が大きく3つの種類のステージを考えるようになったのかを整理してみます。
知識レベルのみを考えていると、説明して終わりになります。正しいことをまたは、最終的に覚えるべきことのみを伝えて終わりです。
大抵に人には、これでは伝わりません。もともと波長が合う人、背景を共有している人であればたまにうまくいきますが。
伝わらないので、今度は、擬似的に背景を共有することが必要になるのではないかと考えました。自分が学ぶに至ったプロセスを共有すれば、相手と背景を共有できます。こう考えた結果が体感レベルです。
そしてそれらを前提とした上で、常に考えなければいけないのが学ぶ目的レベルで、これは、そもそも自分が学んだときと目的が違うのではないかということを予想する視点でした。
これらは、特に正解があるわけではありませんが、意識して仮説をたてながら教えるとようにするとよいと思っています。